テーマ

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鳥の歌、風の音、川のせせらぎ、樹々のざわめき…
森へ入ると、森に棲むすべての生きのものの命の響きが、僕の命と共鳴する。
みんな生きている。僕も生きている。

そして、僕はみんなのおかげで生きている。植物の生み出す酸素をいただいて、僕は生きている。
雨も川も、いずれ僕の体液となる。鳥の歌は、僕に音楽とはなにかを教えてくれる。僕の音はみんなのおかげでてきている。

だから、僕は、僕の音を彼らにも聴いてもらいたいと思った。
芸術とは、一般的には人間が人間に向けて発するものかもしれない。
音楽、絵画、彫刻、映画、みな人間が鑑賞するために創られるものかもしれない。

でも、僕は、近所の犬のチロにも聴いてもらいたい。
スズメにも、ミミズにも、タンポポ、モミノキにも聴いてもらいたい。
人間も含め、生きとし生けるもの全ての命と共鳴する音を生み出したい。

music for all living things
生きとし生けるものすべてに向けた音

社会のストレスで生きる力を失いそうになった僕は、
命の洗濯をしたくて、沖縄の北部にある
ヤンバルと呼ばれる森林地帯に行った。

そこにはたくさんの命が生きていた。
鳥が歌い、小さな美しい川が、きらきらと輝いていた。
僕は、目をつぶり、森の息づかいを感じながら、
持っていた鍵盤ハーモニカを吹いた。

メロディが生まれた。

音は、森のすべてと共鳴し、調和したように感じた。
ああ、これだ。
僕はこれを音にしていけばいいんだ。

森が教えてくれた。
僕はどんな音を紡ぐべきかを

あなたが聴いてくれて
ハチドリが聴いてくれて
近所の犬のチロが聴いてくれて
雲が流れ、太陽が輝き、花が咲き、
そんなに幸せなことがあるだろうか

僕はありのままにあればいい
息をするようにピアノを弾いて
死んでいけばいい

もし何も信じられなくなっても
いま生まれた音
いま目の前で聴いてくれている君
いますぐ横で支えてくれる仲間
いまささやいた鳥、いま吹いた風を
信じていけばいい

いま目の前にあるものを信じて

いるよ いるよ

僕はそこにいるよ
君もそこにいるね

僕たちは自然という母から生まれ、
いまも生かされている。
すべての命は自然とのつながりの中で生きて、
循環している。

僕の音もそうありたいと願ったら、
音は自然に生まれてきた。

オリジナル曲と即興演奏だけ
演奏するというスタイルも、
どのジャンルにも属さない音楽性も、
自然に生まれてきたんだ。

すべての人は、生まれながらに、
自分の言葉で話すようにできている。
僕は、僕の音を紡げばいい。

僕は僕だから、
僕の音を紡ぐ

音で、
人と自然をつなげる

人の心から緑が失われたから、
この世界からも
緑が失われつつあるのかもしれない。

ならば、心の中の緑が蘇れば、
この世界の緑も蘇り、自然破壊が
止められるのかもしれない。

心に作用する「芸術」には、
その力があると信じて、僕は音を紡ぐ。

細胞にとけてく音は
色を帯びて全身をめぐり、
生きているという感覚を
呼び覚ましてくれる。

ヒームストラ舞 / フラワー・アーティスト

みんなの声

“重松壮一郎の音とは”

ピアノの前、目をつむる。
その静寂は、命を懸けるための祈り。
何のために演奏するのか??
それは彼にとって、
何のために生きているのかということ。
生、その答えを、光を、
彼の音の中に、かいま見る。

稲尾教彦 / 詩人・言語造形家

自然の大切さをさりげなく、
たおやかに、地球の息するもの
すべてに敬意を払い、志し高く
息を吹き込む自然派音楽家、重松さん!
彼の音楽に包まれると、
自分の業を思い知らされる。
言葉は無いのにその音は
素晴らしく雄弁に自然を愛でる−−
もっと人が自然界で、
謙虚でありますようにとさざ波のような
ささやきが聞こえてくるのです…。

木内里美 / 舞台役者

音と音のあいだ、音の消えていく余韻にさえ、
心が込められているのを感じる。
そして私の心も、重松さんの心と共にあることを
感じられるのです。

成松恵介 / 心理療法家

委ねるだけでいい心地よさ。
この世界に調和しないものなど
何もないような気持ちになりながら
音と音の間をたゆたうような感覚。
私は、音の一部として存在する…。

あるライブ会場にて